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リフォームのカスハラ、その芽を摘むには?|「普通」のズレがこじれる前に

リフォームのトラブルは、工事が始まってから起きるとは限りません。

その芽は、もっと前にできていることがあります。

2026年10月1日から、事業主にはカスタマーハラスメント対策が義務づけられます。 厚生労働省では、顧客等の言動のうち、業務の性質などに照らして社会通念上許容される範囲を超え、労働者の就業環境を害するものをカスタマーハラスメントとしています。

ただ、リフォームの仕事をしていると、

「ここからがカスハラです」と線を引くだけでは足りない

と感じます。

なぜなら、その手前にあるトラブルの多くは、

建築業界の「普通」と、施主の「普通はこうじゃないの?」のズレ

から始まることがあるからです。

そのズレを放置したまま工事へ進むと、

「そんな話は聞いていない」

「普通はそこまでやってくれるでしょう」

「いや、建築ではこれが普通です」

と、お互いの「普通」がぶつかり始めます。

今回は、カスハラの良し悪しを決めるというより、そこまで関係がこじれる前に、リフォームでは何に気をつけておきたいのかを考えてみます。


リフォームでは、「普通」が同じとは限らない

リフォーム会社には、建築の仕事をしているからこその「普通」があります。

たとえば、

壁や床を開けてみないと、中の状態までは分からない。

既存部分を残して工事をする以上、新築とまったく同じようには仕上がらないことがある。

下地の状態によっては、仕上がりに限界がある。

古い部分と新しい部分をつなげれば、見切り材が必要になることもある。

建築の仕事をしている人間からすると、珍しくない話です。

でも、施主にとっては違います。

「見積もりを出しているのだから、追加費用は出ないのが普通では?」

「プロに頼むのだから、全部きれいになるのが普通では?」

「そこも当然、工事に含まれていると思っていた」

こうした感覚も、不自然ではありません。

問題なのは、

業者と施主が、それぞれ違う「普通」を持ったまま話が進んでしまうことです。


「建築では普通です」は、説明にはならない

工事が始まってから、

「これはリフォームなので仕方ありません」

「こういう納まりになるのが普通です」

と説明することがあります。

それ自体は、技術的には間違っていないことがほとんどだと思います。

でも、お客様がそれを知らなかったのであれば、

「普通です」と言われても、納得しにくい。

たとえば、既存の壁と新しくつくった壁では、同じクロスを貼っても下地の状態が違います。

解体して配管の傷みが見つかれば、予定していなかった工事が必要になることもあります。

古い床と新しい床をつなぐために、見切り材を入れることもあります。

施工側から見れば、

「そうなる可能性はある」

という話でも、

施主側から見れば、

「それなら最初に教えてほしかった」

になる。

私は、ここにかなり大きな差があると思っています。


契約時こそ、「完成形」の認識を共有しましょう

契約するときは、どうしても、

工事内容。

商品。

金額。

工期。

支払い条件。

そういったところに目が向きます。

もちろん、どれも大事です。

ただ、リフォームではもうひとつ確認しておきたいことがあります。

「完成したときに、どうなるのか」です。

既存部分との取り合いはどうなるのか。

どこまでが今回の工事範囲なのか。

補修しても新品と同じ状態にはならないところはあるのか。

解体後に追加工事が必要になる可能性はあるのか。

追加になった場合、どの時点で費用を確認するのか。

工事中はどの程度、音や埃が出るのか。

こうした話は、契約書の金額欄だけを見ていても分かりません。

でも、実際に揉めるのは、こういうところだったりします。

一方で営業側も、契約が決まると少し安心します。

見積もりをつくる。

何度も打ち合わせをする。

商品を決める。

金額を調整する。

そこまで終わると、

「次は発注しよう」

「工程を組もう」

「職人を押さえよう」

と頭が切り替わります。

でも本当は、このタイミングでもう一度、

工事後の姿を施主と共有しておく。

ここが大事です。

お客様が嫌がりそうな話。

追加になるかもしれない話。

きれいにできない可能性がある話。

工事中に不便になる話。

そういう話ほど、契約時にきちんと伝えておいたほうがいいと思います。


「契約書に書いてあります」だけでは、片付かないこともある

たとえば、工事が始まってから、

「ここもきれいにしてくれると思っていました」

と言われたとします。

見積書には入っていない。

契約書にも書かれていない。

会社側としては、

「契約範囲には含まれていません」

と言えます。

でも、それで終わりではないと思っています。

なぜ、お客様は含まれていると思ったのか。

営業の説明が曖昧ではなかったか。

「ここまでやります」と伝えたときに、どこから先はやらないのかまで説明していたか。

業者側に契約上の落ち度がなくても、

伝え方には改善できるところがあった

ということはあります。

このあたりを飛ばして、

「契約書に書いてあるので」

だけで終わらせてしまうと、施主との温度差はさらに大きくなります。


何を求めるかと、どう求めるかは分けて考える

施工側に説明不足やミスがあれば、施主から厳しく指摘されることはあります。

必要な補修や説明には、きちんと対応するべきです。

たとえば、

「工事でつけた傷を直してください」

という要求。

施工側がつけた傷なら、内容としては自然です。

ただ、その要求を伝えるために、担当者を何時間も拘束したり、暴言を繰り返したりするのであれば、話は変わります。

逆に、言い方が穏やかでも、

契約にない工事を何度も無償で求める。

実際に起きた損害とは大きく離れた補償を求める。

となれば、今度は要求の内容そのものを考える必要があります。

つまり、見るべきなのは、

何を求めているのか。

と、

どう求めているのか。

この両方です。

厚生労働省も、契約等で想定するサービスを著しく超える要求、不当な損害賠償要求のほか、暴言や威圧的な言動、継続的・執拗な言動、拘束的な言動などを、社会通念上許容される範囲を超える例として示しています。

施工側に原因があることと、どんな要求や言動でも受け入れなければならないことは別です。


「言った・言わない」が入ると、さらにややこしくなる

リフォームでは、工事が始まるまでに何度も話をします。

現地調査。

見積もり。

商品決め。

契約。

着工前の確認。

その中で、

「前にお願いしました」

「そこまでは聞いていません」

が起こることがあります。

悪意がなくても、人の記憶は少しずつ変わります。

「できたらやっておきます」

という言葉が、

「やってくれる約束だった」

に変わることもあります。

だから、重要なことほど残しておく。

変更があれば、その都度確認する。

これは会社を守るためだけではありません。

施主にとっても、

「言ったのにやってくれなかった」

を減らすことにつながります。


担当者だけで抱えない仕組みも必要になる

2026年10月1日からは、カスタマーハラスメント対策が事業主の義務になります。 厚生労働省は、方針の明確化や相談体制の整備、事実関係の確認、適切な対応などを事業主に求めています。

リフォーム営業は、お客様との距離が近い仕事です。

家へ何度もお伺いすることもあります。

電話でもたくさんお話しします。

工事が終わるまで長くお付き合いします。

だからこそ、関係が悪くなったとき、

「自分のお客様だから、自分で何とかしないと…」

と思いやすい。

でも、どこから会社として対応するのか。

誰に相談するのか。

担当者を一人にしないのか。

このあたりは、会社側で決めておくべき大事なことだと思います。

厚生労働省も、企業ごとに実情や顧客対応のあり方を踏まえて、判断基準を整理しておくことが望ましいとしています。


業者も施主も、「自分の普通」を一度言葉にする

カスタマーハラスメント対策が義務化されるからといって、

「これはカスハラです」

と線を引くだけでは、リフォームのトラブルは減らないと思います。

リフォームは、完成品を買って終わるものではありません。

今ある家に手を入れて、話をしながら完成まで進めていきます。

だから、多少の認識違いは起こります。

業者側は、

「建築では普通だから、分かっているだろう」

と思わない。

施主側も、

「普通はこうしてくれるだろう」

だけで進めない。

分からなければ確認する。

伝えにくいことほど、早めに伝える。

曖昧なところは、そのまま工事へ持っていかない。

そして、問題が起きたときには、

要求の内容だけでなく、その伝え方にも気をつける。

業者は、業界の当たり前を説明する。

施主は、自分の「普通」を言葉にする。

そのすり合わせを、工事が始まる前に一度きちんとしておく。

リフォームとカスタマーハラスメントを考えるなら、私はまずそこからだと思います。


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