リフォームの相談を受けたとき、私が最初に聞くのは、希望する設備のメーカーでも、用意している予算でもありません。
「今の家で、いちばん困っていることは何ですか?」
まずは、ここからです。
リフォームを考え始めると、会社を探したり、ショールームでキッチンやお風呂を見たりしたくなるものです。新しい設備を見るのは楽しいですし、そこから暮らしのイメージが広がることもあります。
ただ、困っていることが曖昧なまま商品を選び始めると、いつの間にか新しくすること自体が目的になり、本当に解決したかったことが見えにくくなります。
作業台が狭くて料理がしづらいのか。収納が足りず、物が出たままになるのか。それとも、料理中に家族との会話へ入りにくいことが気になっているのか。
同じ「キッチンを新しくしたい」という希望でも、困っていることによって必要な工事は変わります。
だから、リフォームを考え始めたときに最初にやることは、会社探しでも設備選びでもありません。
今の暮らしで困っていることを、見つけることです。
今日は、そこから何を考え、どう次の一歩へ進めばよいのか。普段、お客様との打ち合わせでお聞きしていることをもとにお話しします。
リフォームは、小さな困りごとから始まる
お客様から最初に、
「リフォームをしたいんです。」
と言われることは、それほど多くありません。
「食洗機が壊れてしまって。」
「子どもが大きくなり、収納が足りなくなったんです。」
「冬になると寒くて、毎年つらいんです。」
ご相談の始まりは、このような暮らしの困りごとであることがほとんどです。
今すぐ生活できなくなるほどではないけれど、毎日少しずつ気になる。その小さな不便が積み重なり、
「そろそろ、何とかしたほうがいいかな。」
と考え始めます。
リフォームは、工事をしたいから始めるものというより、今の暮らしに合わなくなったところを見つけることから始まるものなのだと思います。
欲しい設備より、引き継ぎたくない不便を考える
打ち合わせでは、リフォームの内容を決める前に、今の暮らしで不便に感じていることをお聞きします。
たとえば、同じキッチンの相談でも、作業スペースの狭さに困っている方もいれば、食器の片付けや収納、家族との会話のしづらさに悩んでいる方もいます。
困りごとが違えば、考えるべきことも変わります。
作業スペースを広くしたいなら、キッチンの大きさや配置を見直す。片付けを楽にしたいなら、食洗機や収納の使い方を考える。家族と話しながら料理をしたいなら、対面式かどうかだけでなく、立つ向きやリビングとのつながりまで見ておく必要があります。
だから最初から、
「どのキッチンにしよう。」
と考えなくても大丈夫です。
先に考えておきたいのは、今の家の何を、これからの暮らしへ引き継ぎたくないかということです。
ここが分かっていれば、設備や間取りを選ぶときにも、自分たちなりの判断基準を持てるようになります。
リフォームをしなくてもよいこともある
困りごとを見つけたからといって、必ずリフォームをする必要はありません。
設備を丸ごと替えなくても、修理や家具の配置変更、収納の見直しだけで解決できることがあります。食洗機やコンロなど、不調の出た設備だけを交換すれば済む場合もあるでしょう。
実際にお客様とお話ししていても、
「そこは、今すぐ工事をしなくても大丈夫ですよ。」
とお伝えすることがあります。
工事をしないで解決できるなら、そのほうが費用も時間も掛かりません。いくつかの方法を考えたうえで、
「やっぱり、リフォームをしたほうが暮らしやすくなりそうだ。」
と思えたなら、納得して次へ進めます。
リフォームは決して安い買い物ではありません。だからこそ、最初から工事を前提にするのではなく、困りごとを解決する方法の一つとして考えるくらいでよいと思います。
設備を修理しながら使うか、交換するかで迷ったときの考え方は、次のリフォームはいつ?|メンテナンスの目安を知っておこうでもまとめています。
家族には「何を替えたい?」と聞かない
家族と暮らしているなら、自分だけで決めず、ほかの人にも困っていることを聞いてみてください。
料理や洗濯をする人、朝早く仕事へ出る人、学校から帰って自分の部屋で過ごす子どもでは、家の使い方も見えている不便も違います。自分では何とも思っていなかったことを、家族は毎日負担に感じているかもしれません。
このとき、
「リフォームするなら、何を替えたい?」
と聞くと、新しいキッチンや大きなお風呂など、欲しいものの話になりやすくなります。
最初に聞きたいのは、
「今の家で、何か困っていることある?」
ということです。
「そんなことを気にしていたんだ。」
という話が出てくることもあります。
家族全員の希望を、すべて工事へ入れる必要はありません。まずは、それぞれが何を感じながら暮らしているのかを知っておく。それだけでも、打ち合わせが進んでから希望が増えたり、家族の意見が食い違ったりすることを減らせます。
困りごとは、場所より場面で残しておく
最初から、きれいな要望書を作る必要はありません。紙でも、スマートフォンのメモでも構わないので、暮らしのなかで気になったことを少しずつ残してみてください。
そのときは、
「キッチンが使いにくい。」
ではなく、
「調理台が狭く、切った食材を置く場所がない。」
というように、困った場面まで書いておくのがおすすめです。
洗面室なら、「収納が少ない」だけでなく、「家族が入浴中は洗面台を使いにくい」「洗濯物を干す場所まで何度も往復する」といった暮らしの場面を残します。
リフォーム会社が知りたいのも、欲しい設備の名前だけではありません。いつ、どこで、誰が、何に困っているのかが分かれば、設備交換以外の方法も含めて提案しやすくなります。
こうしたメモがいくつか集まると、自分たちが本当に変えたいことも見えてきます。
これからの計画で起こりやすい後悔を先に知っておきたい方は、リフォームでよくある失敗20選も参考にしてみてください。
まだ、予算も間取りも決めなくていい
困りごとを書き出していると、
「予算も決めておいたほうがいいのかな。」
「間取りまで考えてから相談したほうがいいのかな。」
と気になるかもしれません。
でも、この段階ですべてを決める必要はありません。
実際に家の状態を確認しなければ、できる工事や必要な費用が分からないこともあります。自分たちだけで間取りを決めてしまうと、構造や配管の都合で実現できず、考え直しになる場合もあります。
リフォーム会社が家を訪れたときに何を確認しているのかは、リフォームの現地調査とは?|現役営業が見ているポイントで詳しくお話ししています。
最初は、困っていることがいくつか分かっていれば十分です。その次に、予算や時期、優先順位を整理し、会社へ相談できる形にしていきます。
リフォームを考え始めたばかりの段階で、正解まで用意しておく必要はありません。
リフォームは、今の暮らしを振り返るところから
リフォームというと、新しいキッチンやお風呂を選ぶところから始まるように見えます。
でも、本当はその前にやることがあります。
今の家で、何に困っているのか。なぜ、それが不便なのか。家族は、どんなことを感じているのか。そして、工事以外の方法では解決できないのか。
ここまで考えてみて初めて、自分たちに必要なリフォームの形が少しずつ見えてきます。
リフォームの計画は、図面から始まるものではありません。
毎日の暮らしを見つめ直すことから始まります。
次の記事
困っていることが少し見えてきたら、次は会社へ相談する前の準備です。
予算や時期、やりたいことの優先順位を整理しておくと、その後の打ち合わせが進めやすくなります。
次は、002|リフォーム前にやっておきたい3つの準備へ進みます。