キッチンの動線を考えるとき、夕食をつくっている場面を思い浮かべる方が多いと思います。
冷蔵庫から食材を出し、シンクで洗い、調理台で切って、コンロで加熱する。
たしかに、この流れが無理なくつながることは大切です。
ただ、実際のキッチンで動いているのは、料理をする人だけではありません。
朝食を用意している横で、家族が冷蔵庫から飲み物を取り出す。お弁当を詰めている後ろを、食器を取りに来た人が通る。食べ終わったお皿が運ばれてきて、シンクの前がふさがる。
一つひとつの距離は短くても、そのたびに場所を譲っていれば、使いやすいキッチンとはいえません。
キッチンの動線は、最短距離をつくることだけではなく、その家で一番忙しい時間に、家族の動きが重ならないかを見ることが大切です。
今日は、朝と夜のキッチンを思い浮かべながら、使いやすい動線について考えてみます。
キッチンの形がまだ決まっていない場合は、キッチンの種類はどう選ぶ?|I型・L型・対面式の違いからご覧ください。
まず、朝の10分間を思い出してみる
朝のキッチンには、いくつもの用事が重なります。
朝食をつくる。
お弁当を詰める。
コーヒーやお茶を入れる。
冷蔵庫から牛乳やヨーグルトを取り出す。
食器を用意し、食べ終わったお皿を片付ける。
料理をしている人は一人でも、家族がそれぞれの用事でキッチンへ入ってくることがあります。
このとき、冷蔵庫がキッチンの奥にあると、飲み物を取りに来た家族が調理スペースを横切ります。
普段使うコップやお皿が奥の食器棚にあれば、それを取りに来るたびに場所を譲ることになるかもしれません。
冷蔵庫や食器棚を考えるときは、料理をする人からの距離だけでなく、
- 家族がどちらから取りに来るか
- 冷蔵庫の扉を開けると通路をふさがないか
- 家族が立っていても、調理を続けられるか
- 食器をキッチンの奥まで取りに行く必要があるか
というところも見ておきたいと思います。
家族がよく使う冷蔵庫や食器をキッチンの入り口に近づけると、調理する場所へ深く入らずに用事を済ませられることがあります。
もちろん、どの家でも入り口側へ置けばよいわけではありません。
大切なのは、朝のキッチンを、料理をする場所だけでなく、家族が行き交う場所として見ることです。
夜は、食器を戻すところまで考える
夜のキッチンは、朝とは少し違う動きになります。
冷蔵庫から食材を出し、洗い、切り、加熱する。
食器を取り出して料理を盛り付け、食卓へ運ぶ。
食後は、お皿を下げ、残った物を片付け、食器を洗って収納へ戻します。
キッチンの動線というと、コンロで料理が完成するところまでを考えがちです。
ただ、毎日の家事はそこで終わりません。
食洗機の近くに食器収納がなければ、洗い終わった食器を戻すために何度も往復します。
手洗いが中心の家庭なら、水切りかごを置く場所と、乾いた食器を戻す場所の関係も大切です。
ごみ箱が遠ければ、調理中だけでなく、食べ残しや容器を片付けるときにも移動が増えます。
夜の動線を見るときは、
食材を取り出してから、使った食器を元の場所へ戻すまでが、無理なくつながっているか。
そこまで思い浮かべると、調理台だけでなく、食器棚や食洗機、ごみ箱の位置も見えてきます。
ワークトライアングルは、一つの目安
「ワークトライアングル」という考え方がはご存知でしょうか?
冷蔵庫、シンク、コンロの三か所を結び、その距離や位置関係から、料理中の移動を考えるものです。

三つが離れすぎていれば移動が増え、近すぎれば調理台や通路の余裕がなくなるため、配置を考える手がかりになります。
ただし、ワークトライアングルで見えてくるのは、主に料理をする人の動きです。
家族が冷蔵庫へ向かう動き。
食器を運ぶ人の動き。
食後のお皿を下げる動き。
冷蔵庫や食洗機の扉を開けたときに、通路がどうなるか。
こうした動きまでは、三角形だけでは分かりません。
ワークトライアングルへきれいに納めることを目的にするのではなく、料理中の移動を確認する一つの目安として使う。
そのうえで、家族の動きがどこを横切るのかも見ておきたいところです。
図面では、「ちょっとよけて」が生まれる場所を見る
キッチンの図面には、設備や収納がきれいに並んでいます。
けれど、実際に暮らし始めると、そこに人が立ち、扉や引き出しを開けます。
冷蔵庫を開ける人。
調理台でお弁当を詰める人。
食洗機から食器を出す人。
後ろを通って飲み物を取りに来る人。
図面を確認するときは、家族が一番忙しく動く場面を一つ選び、それぞれがどこへ立つのかを思い浮かべてみてください。
「冷蔵庫を開けたら、後ろを通れるだろうか。」
「食洗機と食器棚を、同時に開けられるだろうか。」
「二人で立ったとき、何度も場所を譲ることにならないだろうか。」
動線の使いにくさは、歩いた距離よりも、
「ちょっとよけて。」
と声をかける場所に表れることがあります。
可能であれば、床へテープを貼り、キッチンや収納の大きさを再現してみる方法もあります。
扉を開け、人が立った状態まで想像すると、図面のなかのキッチンが、少しずつ普段の暮らしに近づいてきます。
すべてを動かさなくても、動線は変えられる
動線をよくするために、キッチンの向きや位置を大きく変える方法もあります。
ただ、リフォームではキッチンを移動すると、給排水管や換気ダクト、電気配線の工事が必要になることがあります。
床や壁、天井の補修まで広がり、費用も大きくなるかもしれません。
一方で、冷蔵庫や食器棚の位置を変えるだけで、家族とぶつかりにくくなることもあります。
よく使う食器をダイニング側へ移す。ごみ箱を調理中に使いやすい場所へ納める。家族が飲み物を取る場所を、調理スペースから少し離す。
大がかりに配置を変えなくても、一番動きが重なる場所を見直すことで、毎日の小さな使いにくさを減らせる場合があります。
すべてをつくり直すのではなく、今の使いやすさを残しながら、一番詰まっている場所をほどいていく。
それも、リフォームの考え方の一つだと思います。
自分たちのキッチンが、一番忙しいのはいつですか?
朝食とお弁当を同時につくる朝。
家族が集まり、配膳と片付けが重なる夜。
二人でゆっくり料理をする休日。
同じキッチンでも、時間によって使う人と動き方は変わります。
一般的に使いやすいとされる配置が、そのまま自分たちの暮らしに合うとは限りません。
まずは、自分たちのキッチンが一番忙しくなる時間を思い出してみてください。
誰がキッチンへ入り、何を取り、どこへ立つのか。
そのときに何度も場所を譲っているところがあれば、そこに動線を整える手がかりがあります。
使いやすいキッチンは、歩く距離が短いだけのキッチンではありません。
料理をする人も、そばを通る家族も、それぞれの動きを止めずに過ごせるキッチンです。
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家族の動きが重なる場所を考えると、次に気になるのが通路の広さです。
一人で使う場合と、二人で立つ場合では、必要な余裕が変わります。
ただし、広ければ広いほど使いやすいわけでもありません。キッチンと背面収納が離れすぎると、振り返るだけで届いていた物を、歩いて取りに行くことになります。