便器を交換するなら、今より少しでもトイレを広くしたい。そう考えて、奥行きの短い便器を探す方もいます。
コンパクトな便器へ替えれば、確かに便器前の余白は増えます。ただ、タンク上に手洗いがある便器からタンクレストイレへ替えると、今度は手を洗う場所が必要です。別置きの手洗器を付ければ、前方は広がっても横幅が狭くなることがあります。
トイレを広く使うには、便器の寸法だけでなく、壁から壁までの長さ、ドアの開き方、手洗器や収納を置いたあとの横幅、将来手すりを付ける場所まで一緒に考えます。
今日は、限られたトイレの中で、どこに余白を残すと動きやすくなるのかを見ていきましょう。
便器を小さくすると、どれくらい変わる?
奥行きの短い便器としてよく挙げられるサティスSは、奥行き650mmです。LIXILでは、1992年から2005年に発売された従来品と比べて約140mmコンパクトとしています。
たとえば、壁から壁までの内法が1,300mmなら、奥行き790mmの便器では前方に残るのは約510mm、650mmの便器なら約650mmです。14cm違えば、衣服の上げ下げや立ち座りはしやすくなります。
ただし、サティスSにはタンク上の手洗いがありません。今の便器でタンク上の手洗いを使っているなら、別置きの手洗器を付けるのか、トイレの外で洗うのかも一緒に決める必要があります。別置きにすれば便器前は広がっても横幅を使うため、トイレ全体が必ず広く感じられるとは限りません。
一方で、今使っている便器がもともと短ければ、交換して増える余白は数センチかもしれません。小さい便器に替えること自体を目的にせず、既存便器と候補商品の奥行きを比べ、設置後に前方が何mm残るかを確認すると良いでしょう。
便器の位置は、排水芯や給水、コンセントなどの条件にも左右されます。
便器を設置できる条件は、今のトイレに取り付けられる?|排水芯・給水・水圧・コンセントで詳しくお話ししています。
長手方向は、内法1,300mmをひとつの目安にする
住宅性能表示の高齢者等配慮対策等級やフラット35の技術基準には、トイレの長辺を内法1,300mm以上とする基準があります。もう一つの基準は、便器の前方または側方に、便器から壁まで500mm以上を確保することです。
これは、すべての住宅に求められる最低寸法ではなく、将来の使いやすさに配慮した住宅の評価基準です。それでも、長手方向1,300mmは、トイレの広さを考えるときの一つの目安になります。
便器前は、通るだけでなく、衣服を上げ下げし、向きを変え、立ち座りをする場所です。リフォーム後の内法寸法と便器の奥行きを図面へ入れ、前方に残る距離まで見ておきましょう。
開き戸なら、外開きを基本に考える
トイレの開き戸は、外開きを基本に考えます。内開きにすると、ドアを開くための場所を室内へ残さなければならず、使える床が減るためです。
もう一つの理由は、トイレの中で人が倒れたときの救助。ドアの前に人が倒れると、内開きでは体が邪魔になり、外から開けられなくなるおそれがあります。
外開きは廊下側へドアが張り出しますが、安全面を考えると内開きより適しています。廊下側への張り出しが気になる場合は、内開きにするのではなく、引き戸にできるかを検討します。
引き戸は動きやすいが、音とにおいに注意する
引き戸は、ドアをよけながら体を前後へ動かさずに開閉できるため、出入りがしやすくなります。開き戸のように扉が回転する場所も取りません。
ただし、引き戸は開き戸より戸の周囲に隙間ができやすく、音やにおいが漏れやすい傾向があります。とくに壁の表面を走らせるアウトセット引き戸は、納まりによって隙間が目立つため、トイレの位置によっては避けたいところです。
引き戸にするなら、枠のある片引き戸をトイレ側へ納めるか、戸袋へ引き込むタイプを検討します。壁の中へ戸を引き込む場合は、配線や手すりの下地と重ならないかも確認してもらいましょう。
手洗器や収納を置くと、使える横幅が狭くなる
便器前に余裕があっても、手洗器や収納が便器の横へ張り出すと、立ち座りや掃除がしにくくなります。商品単体の奥行きだけでなく、扉や引き出しを開けたときに、体が立つ場所を残せるかまで見ておきます。
別置きの手洗器を付けたことで、立ち座りのときに肘や腰が当たりそうなら、タンク上の手洗いにするか、近くの洗面台や廊下手洗いを使う方法もあります。
手洗器の置き方は、トイレの手洗いは必要?|タンク上・別置き・洗面所を使う場合で比較しています。
収納も、床置きで横幅を使うものより、壁の厚みを利用した埋め込み収納や吊戸棚のほうが、足元を広く残せる場合があります。何をどれだけ置くかは、次の記事で詳しく整理します。
手すりを付けるなら、手すりまでの距離で考える
手すりは壁から張り出すため、取り付ければ使える横幅は少し狭くなります。また、トイレの横幅を広げたことで便器と手すりが離れすぎると、手が届きにくく、立ち上がるときに力を掛けられません。
将来の手すりを考えるなら、トイレの横幅だけでなく、便器から手すりまでの距離も決めておきます。介助を想定する場合は、反対側に人が立てる幅も必要です。
今すぐ手すりを付けない場合は、壁の下地だけ準備しておくと安心です。ただし、必要になる手すりの形や位置は体の状態によって変わるため、ある程度の範囲で入れておくと対応しやすくなります。
トイレを広く使うなら、便器以外も一緒に見る
奥行きの短い便器へ替えると、前方に数センチから十数センチの余白を増やせます。とくに長手方向が1,300mm前後のトイレでは、その差を感じやすいでしょう。
ただし、内開きのドアや横へ張り出す手洗器、床置き収納が残れば、動きやすさはあまり変わりません。開き戸は外開きを基本にし、引き戸なら納まりと音、におい漏れに注意。手洗器や収納、手すりは、設置後に残る横幅まで見て決めます。
トイレを広く使うには、便器を小さくするだけでなく、立つ場所と動く場所をふさがないことが大切です。
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