「そろそろ、お風呂を新しくしたいんです。」
カタログを開けば、やわらかい床や断熱浴槽、浴室暖房、掃除の負担を減らす工夫など、気になるものがたくさん並んでいます。どのメーカーがよいのか、どの設備をつけるのか。そこから考えたくなる気持ちも、よく分かります。
でも、私が最初に聞くのは、商品や色の希望ではありません。
「今のお風呂で、どんなときに困っていますか。」
同じように古くなった浴室でも、寒さがつらい家庭と、掃除の負担を減らしたい家庭では、選びたいものが変わります。浴槽へゆっくりつかる人と、シャワーで済ませることが多い人でも、お風呂に求めることは同じではありません。今日は、浴室リフォームの相談を受けたとき、私がどのようなことから伺っているのかをお話しします。
浴室に限らず、リフォームの考え始めについては、001|リフォームって何から始めればいい?でもお話ししています。
最初に聞くのは、「なぜ今なのか」
浴室を変えたい理由として、よく聞くのは「古くなったから」という言葉です。そこでもう少しお話を伺うと、気になっていることが少しずつ見えてきます。
冬に服を脱ぎ、冷えた床へ足を下ろすのがつらい。浴槽をまたぐとき、以前より足を上げにくくなった。排水口やカウンターの裏側を洗うたびに、もう少し掃除が楽ならと思う。
見た目の古さがきっかけでも、その奥には毎日の小さな負担が隠れていることがあります。反対に、水栓や換気扇の不具合だけが気になっていて、浴室全体を変えなくてもよい場合もあります。年数だけで交換を決めるのではなく、今起きていることを一緒に整理するところから、相談は始まります。
設備を見直す時期については、次のリフォームはいつ?|メンテナンスの目安を知っておこうでもまとめています。
誰が、どのようにお風呂へ入っているか
一人ずつ順番に入り、毎日浴槽へつかる家庭もあれば、平日はシャワーだけで済ませる家庭もあります。小さな子どもと一緒に入る時期なら、洗い場で二人が並ぶこともあるでしょう。家族の入浴時間がばらばらで、最後に入る人が毎晩追いだきをしている家庭もあります。
お風呂の使い方は、家族の人数だけでは分かりません。誰が最初に入り、どのくらいの時間を過ごすのか。浴槽へつかる人は何人いるのか。入浴を手伝うことはあるのか。そうした普段の様子を聞いていくと、必要な広さや設備を考えやすくなります。
便利な設備がそろっていても、家族がほとんど使わなければ、日々の心地よさにはつながりません。反対に、毎日のように使うものなら、少し丁寧に選ぶ意味が出てきます。
寒いのは、浴室の中だけとは限らない
「今のお風呂は寒いんです。」
そう伺ったときは、どこで寒さを感じるのかを聞きます。服を脱ぐ洗面脱衣室が寒いのか。浴室へ入った瞬間の空気が冷たいのか。床が冷たいのか。それとも、お湯が早く冷めることが気になっているのか。
浴室を新しくすれば変わりやすいところもありますが、窓や洗面脱衣室から冷えが入っている場合は、浴室本体だけを見ていても悩みが残ることがあります。冬の夜、どこで体が縮こまるのかを思い出してもらうと、必要なのが浴槽の保温なのか、床や壁の断熱なのか、窓や暖房まで含めた対策なのかが見えてきます。
掃除が大変なのは、どの場所か
掃除を楽にしたいというご希望も、浴室リフォームではよく伺います。でも、「掃除しやすいお風呂」といっても、負担を感じる場所は人によって違います。
床の溝に汚れが残る。排水口へ髪の毛が絡む。鏡の水垢が取れない。カウンターの裏側へ手が届きにくい。ドアの下や窓まわりに、ほこりと湿気がたまりやすい。
その場所が分かれば、汚れにくい素材を選ぶだけでなく、そもそもカウンターや棚、鏡をつけないという考え方もできます。入浴を終えたあと、誰がどのように水気を取り、どのくらいの頻度で掃除しているのか。普段のお手入れまで含めて考えると、自分たちにとっての「掃除しやすさ」が具体的になります。
浴室を長くきれいに使うためのお手入れは、リフォーム後のお手入れ方法|長くきれいに使うために知っておきたいことでも紹介しています。
浴槽と洗い場を、どう使っているか
ショールームでは、広く見える浴槽や、体を包むような形に目が向きます。そこで私は、今の浴槽で足を伸ばせているか、またぎ込みに不安がないかを伺います。
子どもと一緒に入るのか、洗い場で二人が並ぶことがあるのか。いつもの入り方をたどると、浴槽と洗い場のどちらにゆとりがほしいのかが見えてきます。
洗濯物を浴室へ干しているか
浴室は、体を洗うためだけに使われているとは限りません。雨の日や花粉の時期に洗濯物を干し、そのまま翌朝まで乾かす家庭もあります。
普段から浴室干しをするなら、浴室暖房乾燥機だけでなく、物干し竿の本数や位置も使いやすさに関わります。反対に、浴室へ洗濯物を干さない家庭では、乾燥機能をほとんど使わないかもしれません。便利そうなものを一つずつ足す前に、今の暮らしに登場するかどうかを見ています。
これから先、誰が使うのか
今は不自由なく入れていても、浴室は十年、十五年と使い続ける設備です。だからといって、将来を心配して、最初からすべてを介護向けの仕様にする必要はありません。
浴槽をまたぐ高さ。立ち上がるときに手を添えられる場所。出入りするときの段差や、ドアを開けたときに残る幅。こうしたところは、今の使いやすさにもつながります。
親と暮らす予定がある。自分たちも、この家で長く暮らしたい。小さな子どもが一人で入り始める時期が近い。少し先の家族の姿まで思い浮かべておくと、つけておきたいものと、今はなくてもよいものを分けやすくなります。
今の浴室について、分かる範囲で教えてもらう
使い方を伺ったあとに、今の浴室のつくりを確認します。戸建てかマンションか。ユニットバスか在来浴室か。窓や段差はあるか。ここは、相談する前にすべて調べておかなくても大丈夫です。
浴室全体と入口、窓、天井の写真があれば、最初の話を進めやすくなります。図面や新築時の資料が残っていれば、一緒に見せてもらいます。
その後の現地調査で、寸法や換気設備、洗面脱衣室とのつながりを確認します。見えない場所の傷みなど、解体するまで分からないことも、相談の段階で分けてお伝えしています。
工事中、お風呂に入れない期間をどう過ごすか
浴室リフォームでは、自宅のお風呂を使えない日が続きます。銭湯へ行くのか、家族の家で借りるのか。小さな子どもや高齢の家族がいると、毎日の移動も負担になるため、工事の日数と一緒に、その間の過ごし方も伺います。
洗面脱衣室まで工事する場合は、洗濯機を使えない日が出るかもしれません。生活のどこが止まるのかも先に分かると、その間の予定を組みやすくなります。
工事前の準備全体については、007|リフォーム工事前にやること①も参考にしてみてください。
希望を決めきってから相談しなくてもよい
リフォーム会社へ相談する前に、メーカーや浴槽の形、壁の色まで決めておく必要はありません。むしろ、先に教えてほしいのは、今のお風呂で気になっている場面です。
寒い朝にシャワーを使うこと。子どもと並んで体を洗うこと。最後に入った人が、濡れたカウンターの下まで掃除していること。
そうした何気ない毎日のなかに、新しい浴室を選ぶ手がかりがあります。
何をつけたいかより、今のお風呂で何が負担になっているかを言葉にする。
そこから話を始めると、必要なものを選びやすくなり、自分たちには要らないものも少しずつ見分けられるようになります。
次の記事
今の使い方や困りごとを整理できたら、次は浴室そのもののつくりを見ていきます。一見すると同じお風呂でも、工場でつくられた部材を現場で組み立てるユニットバスと、床や壁を現場で仕上げる在来浴室では、リフォームの考え方が変わります。